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デイトレ初心者のための信用取引ミニ入門

今回の記事では、デイトレの基礎知識の最後の詰めとして、信用取引について解説します。なぜ最後の詰めに信用取引を取り上げるかというと、デイトレの多くは信用取引の枠組みの中で行われているのですが、一般にあまり仕組みが理解されておらず、デイトレに不安を覚える要因となっているように思われるからです。

おそらくこのブログを訪れる方の多くはデイトレ初心者でしょうから、信用取引に対していろいろと恐ろしいイメージを持っているのではないかと思います。

そのイメージとは、おそらく以下のようなものでしょう。

  • ギャンブル性が高く、儲けも大きいが損も大きい。
  • 大きな損失を出して自己破産のような目に合う。
  • 株価の暴落に巻き込まれて一瞬で財産を失う。
  • 上級者向きで、初心者が手を出すと危ない。

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当キャンプでは、上のようなイメージは、世間が過剰に不安をあおられた結果だと考えています。この記事を読めば、信用取引が通常の株式投資とどう違うのか、どんなリスクがあり、メリットがあるのかを明確に理解できるはずです。

信用取引の仕組み

日本取引所グループ(JPX)は、信用取引の仕組みを次のように説明しています。

信用取引とは、顧客が委託保証金を証券会社に担保として預託し、資金又は証券を借りて売買を行う取引です。所定の期限内に、主に反対売買によって弁済します。委託保証金の約3倍までの売買ができること、信用売りが利用できることが主なメリットです。信用取引のしくみ | 日本取引所グループ *1

信用取引の仕組みには、「担保」「資金を借りて」「弁済」など、私たちの多くが嫌いそうな言葉が含まれています。「私たち」と書きましたが、日本人は他の先進国に比べて「借金」という言葉を非常に嫌う傾向があるように思います*2。そのせいかはどうかは分かりませんが、信用取引は「危ない」「怖い」というイメージが強調されすぎているように思います。

上のJPXの説明は正確さを期するあまり少々わかりづらくなっているので、もっと簡単に説明しましょう。信用取引とは、信用取引口座に30万円以上預ければ、その預けた金額の約3倍まで取引することができる仕組みのことです。この仕組みは証券会社が独自に行うサービスではなく、法令で定められた仕組みです*3

信用取引に関して、法令で定められた委託保証金の約3倍という点ばかり強調される傾向にありますが、ほかにも「期限」「反対売買」「信用売り」といった重要な言葉が出てきます。これらについても適切な理解を持っておきましょう。

信用取引の種類

信用取引は資金または証券を借りて行う取引なので、基本的には借りたものを返す期限が決まっています。その期限は信用取引の種類によって異なるのですが、誰がその信用取引を執り行っているかによって大きく2種類に分けられます。1つは証券金融会社*4が証券会社を通して行う制度信用取引、もう1つは証券会社が独自に行う一般信用取引です。

一般信用取引は証券会社によってさらにいくつかの種類がありますが、当キャンプでは、その中の1日信用取引を念頭に以後の説明を行います。1日信用取引には法令上の定まった名称がなく、証券会社ごとに異なる名称がつけられています。松井証券は「一日信用」、楽天証券は「いちにち信用」、SBI証券は「日計り信用」と呼んでいます。当キャンプではこれらを総称して「1日信用取引」と呼ぶことにします。なぜ1日信用を中心に説明するかというと、このサービスがデイトレード用に設定されたものだからです。

1日信用取引では、返済期限がトレードを行った当日中となっています。当日のうちに決済しないと、どの証券会社でも一種のペナルティが課せられます。翌営業日に任意のタイミングで強制決済され、その手数料という名目で2千円~3千円程度の支払いが発生します。当キャンプが目標にしている1日分の利益額に相当しますね。

制度信用については、JPXのホームページを参照してください。

www.jpx.co.jp

空売りの仕組み

まずこの記事では、「買い建てて売る」ことを「通常の取引」と呼びましょう*5。そして、信用取引には、「買って、売る」取引と、「売って、買う」取引があることが分かります。

この、「売って、買う」という順序で行われる取引を空売りと言いますが、空売りができるという点も信用取引の特徴です。

空売りは株式投資の中でも一般にもっともイメージの悪いものですが、仕組みそのものに倫理的な問題があるわけではないのです。空売りは、自分がまだ保有していない銘柄の株式を証券会社から借りて相場で売り付け、任意のタイミングで同じ数量を買い戻すという流れで行われます。保有していないのに売り付けるので空売りと呼ばれるのでしょう。

空売りが通常の「買って、売る」取引と異なるのは、利益の生まれ方です。通常は安く買って、高く売ることで差額分の利益を得ますが、空売りでは正反対に、高く売って、安く買い戻すことで差額分の利益が生まれます。つまり、株価の下落を想定して利益を出そうとするのが空売りの特徴です。

初めに買うことを「買い建てる」と言い、初めに売ることを「売り建てる」と言いますが、買い建てた銘柄を売ることと、売り建てた銘柄を買い戻すことをまとめて「反対売買」とか「返済」と言います。したがって、1日信用の決済には「売り」と「買い」の2種類があり、買い建てに対する決済を「売埋(うりうめ)」、売り建てに対する決済を「買埋(かいうめ)」と呼んでいます。

当キャンプでお伝えしていくミニトレは原則として空売りをしないのですが、反対売買(または返済)という言葉はトレーディングツールや今後の説明にも出てくるので、決済には2つの方向(あるいは順序)があることを覚えておいてください。

空売りのリスクとメリット

多くのベテラン・上級者のデイトレーダーが、初心者の空売りはやめたほうが良いと言います。当キャンプも同じ意見です。その理由は大きく分けて2つあります。1つは、通常の取引と空売りでは想定しなければならない値動きが逆になるため、視点の切り替えが難しいからです。難しいことは失敗しやすいため、わざわざ初心者が手を付ける必要はないというものです。当キャンプが初心者の空売りをお勧めしない主な理由はこれです。もう1つの理由は、空売りの予想が外れて株価が上昇した場合、上昇幅には理論上の上限がないため、損失額を限定できないというものです。

もちろん現実的には、JPXの取引ルールの中に値幅制限があるため、1日の上昇幅には上限があるのですが、値幅制限を超えて上昇した場合ストップ高となり、取引が成立しません。そうなると自動的に決済ができず日をまたいでしまうため、先に説明したペナルティが発生します。さらに、連続ストップ高という事態がありえますので、理論上ではなく現実として上限を想定できなくなってくるのです。非常にまれだとは思いますが、連続ストップ高となる銘柄を空売りしてしまった場合、取引ができないまま数日が経過すれば、口座資金が急減して退場になってしまうほどの損失が出る可能性もあります。

そんなリスクのある空売りに、メリットはあるのでしょうか?もちろんあります。それは、株価が下落局面でも利益が出せることです。人気が過熱し、株価が上がりすぎてしまった銘柄は、いずれどこかで調整局面を迎え、株価が下がり始めます。ボックス相場とかレンジ相場と言われる状況では、株価が周期的に上昇と下落を繰り返すため、上昇局面では通常の取引をし、下落局面では空売りをすることで、きわめて時間効率の良いトレードが可能です。また、景気後退により市場全体が冷え込んでいるようなときでも、空売りは利益を狙えます。

信用取引のメリット

1日信用や空売りといった、デイトレ初心者の実践にとって優先度が高い具体的な話をしたので、信用取引全般についての俯瞰的な話もしておきたいと思います。

レバレッジ

信用取引の仕組みを説明した際に、信用取引口座に預けたお金の約3倍の取引ができるという特徴を挙げました。この倍率のことを「レバレッジ」と言います。近年ではビジネス書などでも目にする表現なので、知っている人も多いでしょう。レバレッジが利用できることは、現物取引にはない信用取引のメリットです。

現物取引では30万円の資金でトレードするなら、30万円分の株式しか購入することができません。しかし信用取引ならば、90万円分のトレードができるわけです。実は法令で規定されているのは「約3倍」ではなくて、「百分の三十」です。100分の30って、30%ですよね?どういうことでしょう。法律の正確な条文は以下のようなものです。

顧客から、当該取引に係る有価証券の時価に内閣総理大臣が有価証券の売買その他の取引の公正を確保することを考慮して定める率を乗じた額を下らない額の金銭の預託を受けなければならない。(金融証券取引法第161条、強調は当キャンプ)

さすがに法律の条文だとちんぷんかんぷんですね。要するに信用取引は、「自分が持っているお金の約3倍まで取引できる制度」ではなく、「取引したい株式の30%のお金を保証金として証券会社に差し入れれば、顧客を信用して取引させて良い」という制度なのです。ですから、「30万円で約100万円の取引ができる」というのは正確ではなく、「ある銘柄を取引したい顧客が、その銘柄の時価の30%にあたる保証金を差し入れれば、証券会社は取引させてもよし」ということになります。

なぜこんなことをクドクドと書いているかというと、レバレッジのメリットが「取引額を増やせる」というよりも、資金効率が良くなるという点にあることを強調したいからです。

そう理解した上で、レバレッジについてもう一度考えておきましょう。フルにレバレッジをかけた状態をフルレバと呼んでいます。当キャンプでは、小資金でデイトレを始める人こそ信用取引を行うべきだと考えていますが、フルレバには注意が必要です。その理由は、レバレッジは実態としては借金であり、フルレバ状態で出る損失は、損失額にもレバレッジが影響するからです。

信用取引で30万円を保証金として株価1,000円の銘柄を買う場合、最大100万円(1,000株)までの取引が可能となります。しかし、もしその銘柄が50%下落(1,000円が500円になる)した時に売却すると、損失額は500円×1,000株=50万円の損失となり、保証金の30万円を上回り、損失率は167%となります。もちろん信用取引を続けることはできず、保証金を追加で差し入れることができなければ退場となります。

理想的には、委託保証金を超えない程度で信用取引をして、回転売買によって出た利益で委託保証金を増やしていくことが望ましいと思います。

回転売買

「回転売買」については、すでに「デイトレ初心者になろう!」という記事で要点は説明済みですが、当キャンプが初心者にも信用取引を勧める最大の理由となっているので、少し詳しく解説しておこうと思います。

ちょっと前までは、信用取引の魅力はレバレッジと手数料の安さでした。SBI証券と楽天証券が現物取引手数料0円を打ち出してからは、もっぱらレバレッジが強調されるようになりましたが、実は回転売買こそ最大の魅力だと当キャンプでは考えています。

オンライントレードが主流となった現代ではあまりイメージできないことですが、株取引は元来株券を売り手と買い手の間で受け渡し、お金と権利が交換されるものでした。「現物取引」という呼び方にその名残がありますね。下の写真はオンライン化が進む前の取引所の光景です。

NY取引所では今でも一部こうした取引がある。

信用取引でももちろん権利の移転、受け渡しは証券会社の記録上で行われているものの、取引口座のお金は「保証金」であって、株式購入代金ではないのです。そこで回転売買が可能になります。つまり、ある銘柄を取引して売買が完了したら、保証金はすぐに次の取引に使えるということです。このメリットは小資金のトレーダーにとって極めて魅力的です。30万円の保証金で一度に100万円の取引ができるだけでなく、売買が完了すれば一日に1億円、2億円の取引ができるからです。100万円の取引を100回行えば売買代金は1億円となりますが、デイトレーダー(特にスキャルピング)の取引回数として、1日100回はごく普通に行われています。スキャルピングで1回の取引が10秒だとすると、5時間で1800回ものトレードができます。100万円×1800回=18億円です。
30万円で18億もの取引ができると言われても、実感がわかないと思いますが、回転売買がそれを可能にしているというわけです。

信用取引のリスク

信用取引のメリット・魅力について書いてきましたが、それらのメリットはリスクと背中合わせです。リスクについても十分に理解を深めていただきたいと思います。

無自覚なレバレッジと追証

デイトレ初心者のうちは、1回1回の注文手続きに手間取り、取引する金額にも慎重になりますが、トレードに慣れてくると、トレード機会を逃さないために1クリック注文などの簡略化された発注方法を用いるようになります。トレーディングツールによって名称はいろいろですが、ほとんどのツールには1クリックで発注できる機能が用意されているはずです。

値動きの活発な時間帯にトレードするデイトレーダーにとって1クリック注文はとても便利な機能ですが、気づかないうちにたくさんの注文をし、フルレバ状態になる可能性があります。保証金限度額を超えて発注しようとすると注文を受け付けてくれなくなるためすぐに気が付きます。しかし、もしそこから一気に値崩れを起こしたら、小資金のトレーダーはあっという間に資金が枯渇します。保証金が不足し、追加入金を求められる追証です。損失額が大きい場合、保証金がマイナスとなってしまう場合もあります。

このマイナス分を支払えないと、証券口座が凍結され、最悪の場合給与等の差し押さえにまで発展する可能性があります。

レバレッジは資金効率を上げる有効な手段ですが、無自覚なトレードでフルレバ状態にならないよう気をつけましょう。

買いは家まで売りは命まで!?

信用取引でもう1つ気をつけていただきたいのは、空売りです。当キャンプのミニトレでは空売りをしないトレードをお勧めしますが、下落局面でも利益が出せる空売りは、上手に使えば武器になることも事実です。トレーダーの中には「売り専」と言って空売りだけでトレードしている人もいるくらいです。

しかしすでに説明したとおり、空売りは大失敗をするとどこまでも損失が膨らむ可能性があります。株格言で「買いは家まで、売りは命まで」というお恐ろしげな格言がありますが、買いで始まるトレードの下限はゼロと決まっているので、最悪でも財産を処分すれば損失を埋めることができます。それに対して、空売りが生む巨大な損失は、そのトレーダーが保有するすべての財産を処分しても払いきれない可能性があるということを言っているのです。

 

まとめと次回記事の予告

今回の記事では、信用取引のメリットとリスクについて解説してきました。世間では恐ろしげなイメージばかりが語られる傾向にある信用取引ですが、資金効率を高め、トレード機会を逃さないためには、とても有効な取引方法です。しかしその一方で、無自覚なフルレバや空売りは、本来余裕資金でやっているはずのデイトレができなくなるだけでなく、大事な財産まで失うリスクもあることを明確にできたかと思います。今回で第1のキャンプは終了となります。

次回以降の記事では、これまで学んだ最低限の知識を踏まえて、いよいよ具体的なトレード手法の説明に入っていきます。まず当キャンプが「ミニマリズムアプローチ(ミニトレ)」と呼んでいるトレード手法を簡単に説明して第2のキャンプを始め、ミニトレを構成する要素に焦点を当てながら、ステップ・バイ・ステップでミニトレを解説する予定です。

次回もどうぞお楽しみに!

 

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*1:赤字は当ブログによるもの

*2:「投資」という言葉に対しても同様でしたが、近年変わりつつありますね。

*3:金融商品取引法とそれに関する内閣府令で定められています。

*4:証券会社とは全く別物で、証券会社を相手に制度信用取引に関する業務を行っています。個人投資家が関わることはありません。

*5:現物取引も「買って、売る」という順序なので通常の取引と同じです