デイトレ初心者ブートキャンプ!

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必読!これを知らないとデイトレでフリーズしてしまう取引ルールや株用語

株式投資に関するルールには、知らないと損をするようなルール、自分のお金を大きく減らしてしまうようなルール、トラブルを未然に防ぐためのルール、公正さを保つためのルールなど、さまざまなものがあります。当キャンプは法律家の育成を目指しているわけではありませんから、こうしたルールのすべてについての細かい解説はしません。

ただ、デイトレ初心者が、このルールを知らないとトレードでフリーズしてしまうだろうというルールはありますので、今回の記事ではそれに該当するような最低限の取引ルールや用語を説明します。

この記事を読んであらかじめ理解しておけば、トレードを始めてから場中で「???」となる経験をしなくて済むようになるでしょう。

 

信頼できる情報源

日本株を対象にデイトレをしようとする人が、取引ルールについてきちんと理解しておきたいなら、信頼できる情報源が必要です。もっとも信頼性が高い情報源は、おそらく日本取引所グループ(JPX)のホームページです。

www.jpx.co.jp

取引ルールには、若干複雑でとっつきにくいものもあるため、正確な情報を得たいと思ったらJPXのホームページで調べると良いでしょう。そのほかにも、証券各社がホームページ内に証券用語集のページを持っており、一般投資家向けにわかりやすく解説しています。

最低限知っておきたい取引ルール

立会時間

立会(たちあい)時間とは、取引所でデイトレができる時間のことです。デイトレは1日でトレードを完了させるため、立会時間への意識はとても重要です。

立会時間は前場(ぜんば)と後場(ごば)に分かれており、前場は9:00~11:30までの2時間30分、後場は12:30~15:00までの2時間30分、合計5時間が1日にトレードできる時間となります。前場が終わる最後の取引を前場引け(あるいは単に「引け」)、後場の始まりを後場寄り、1日の取引の終わり(後場の終わり)を大引けと言い慣わしています。なお、取引ができるのはこの時間帯ですが、注文の受付自体は、前場は8:00から、後場は12:05から行われています(のちに説明する通り、この受付時間帯の板の観察が重要になってきます)。

 

何時にトレードするかは値動きに関連するため、トレードの成果に影響します。

下の図にあるように、寄り付きから1時間と、大引け前の最後の1時間は取引が1日の中でもっとも活発になる時間帯であり、デイトレの「ゴールデンタイム」と呼ばれます。

特に朝のゴールデンタイムは、多くの銘柄で最大の出来高を作る時間帯で、値動きも非常に活発になりやすいため、デイトレーダーの中には朝の1時間しかトレードしないという人も多くいます。当キャンプでも、朝のゴールデンタイムに3千円程度の利益を出すことを目標にトレード手法を説明する予定です。

売買の単位

株式は、1株、2株と数えますが、売買は1株ずつ行われていません。売買する「単位」が設定されています。この「単位」のことを「ロット」とも言います*1。JPXで取り扱う銘柄は、すべて100株を1単位(1ロット)として取引するよう統一されています*2

ロット数は損益に大きな影響を及ぼす重要な概念です。のちの記事でも詳しくお伝えすることになると思いますが、買い付けて保有する株式のロットを大きくすれば、それと同じ比率で損益が変化します。例えば1千円の株の場合、1ロット(100株)の保有なら株価が1円上がるごとに100円の利益ですが、2ロットなら200円です。株価が下落する場合も同様です。

「デイトレで大負けして退場になった」という場合、ほとんど例外なく大きなロットでトレードし、大損失となっています。簡単にシミュレートしてみましょう。1千円の株を1ロット買った場合と10ロット買った場合、株価が急落して900円になれば(毎日生じるめずらしくもない下落です)、1ロットなら1万円の損失で済みますが、10ロットなら10万円です。これを30ロット、50ロットで想像してみてください。小資金のトレーダーはあっという間に退場になってしまいます*3

これは見方を変えれば、ロット数が大きくなり過ぎないようにしっかりコントロールしていれば、50万円の資金が失われてしまうほどの損失は、そう簡単には起こらないとも言えます。

当キャンプでは、ロット数を大きくせずに利益を狙う戦略を考えていきます。

呼び値の単位(ティック)

呼び値とは「売買の注文をする際の値段の刻み」のことです。トレーダーの会話や文章では「ティック」という言い方のほうがよく用いられるようです。呼び値の単位(1ティック)は0.1円~10万円まで設定されており、株価と銘柄の種類*4に応じて決まっています。

1ティックが0.1円から1円になるということは、価格が変化する単位が10倍になったということと同義で、これは先に見た「ロットを10倍にする」のと同じ効果があります。しかし1ティックが小さいからといって、リスクも小さくなるわけではありません。リアルな相場で板を見ていただくとわかりやすいのですが、1ティック=0.1円の銘柄の中には、売り手と買い手の最良気配(さいりょうけはい、売り手の最安値と買い手の最高値)が、常に10ティック以上離れている銘柄があったりします。これは明確なルールに基づいてそうなっているのではなく、相場参加者たちが1円未満の変動で約定することを避けようとした結果です。

下の図は、2024年5月24日大引け時の東京電力の板です(ツールは楽天証券のマーケットスピード2のもの)。売り気配と買い気配の間が10ティック以上空いているのが見て取れますね。買い手がもっとも安く買おうとしたら、必然的に1円以上高く買うことになりますので、呼び値は0.1円ですが、実態的には1ティック=1円以上になるわけです。


また、呼び値の単位が変化する前後には、取引が非常に活発になる傾向があります。たとえば2,999円の銘柄は1ティック=1円ですが、その銘柄の株価が3,000円になった途端、1ティック=5円に変化します。いきなりロットが5倍になったのと同じことです。その理由から、初心者には呼び値1円の銘柄で始めるよう勧める人が多いです。当キャンプも同意見です。

多くのデイトレーダーが取引する銘柄は、1ティック=0.1円~50円といったところでしょうか。株価が1株3万円~5万円なら1ティック=50円*5、3千円未満なら1ティック=1円といったところです。いま書いたのはTOPIX構成銘柄ではない場合の呼び値で、TOPIX構成銘柄では呼び値がもう少し低めに設定されています。呼び値の一覧はJPXのホームページで確認できます。

注文の種類と競争売買のルール

実践に不可欠な取引ルールとして、注文に関するルールがありす。

デイトレで1番重要な行為は「注文すること」ですが、信用取引の場合、注文をして買い、それを売るための返済注文が約定して初めて1回の取引が完了します*6

注文が約定するルールはシンプルで、買い注文はもっとも高い買値を提示した注文から順番に約定し、売り注文はもっとも安い売値から約定するというものです。簡単に言えば、株を競売にかけているわけです(個別競争売買といいます)。

ただ、上の東京電力の板をもう一度見てください。同じ価格に1000や1万の注文があります。この場合は、約定させる順番が決まっています。約定がもっとも早いのは成行注文で、すべての注文の中で最優先で約定します。これは成行注文が、「いくらでも良い」ことを意味する注文だからです。「売り手の言い値で買うよ」と言っているのと同じです。成行注文が約定した後は、「時間優先原則」が適用され、同じ価格なら早く注文したものから順に約定していきます。この、価格を指定して行う注文を「指値注文」と言います。

また、寄り付きと引けでは「板寄せ」という方式で価格が決定されます。実践上は自然に事が進んでいくので難しくないのですが、取引の開始時と終了時には、買い注文と売り注文の数量が合致した価格で約定させるという方式になっています。寄りと引けの注文は、取引が行われていない時間を含んでいるので、時間優先原則を適用せず少し特別なルールを適用していると考えれば良いでしょう。

特別気配・連続約定気配

ちょっとややこしいのは、板寄せ方式が、寄りと引け以外にも適用される場面があることです。特別気配連続約定気配の場面です。どちらもJPXが独自に定めているルールで、世界共通のルールではありません。JPXは価格の急変動によって市場参加者が思わぬ損失を出すなどの事態を回避しようとする、保護的な立場を取っているようで、特別気配も連続約定気配も、JPXが定めた一定の値幅を超えて株価が急変しそうになると、通常の約定ルール(ザラバ方式と呼ばれます)を適用せず、板寄せ方式に切り替えます。ツールによって板上での表示記号は異なりますが、特別気配の場合は買いか売りのどちらかの板に「特」とか「S」などと表示され、その反対の板には#や*が表示されます。連続約定気配の場合は「連」と表示されます*7

ストップ高とストップ安

これらの言葉はニュース記事などで目にした人も多いと思います。これも世界共通ルールではなくJPX独自のルールです。JPXでは、一日の売買における値動きの幅を、価格水準に応じて一定に制限しており、この値幅を制限値幅といいます。上の特別気配・連続約定気配と同じく、株価の変動が一日のうちに大きくなり過ぎないよう制限をかけているわけです。ストップ高は制限値幅まで株価が上がって取引がストップすることであり、ストップ安は値下がりに対する制限です。

 

違法な行為と類似行為またはグレーゾーン

デイトレに直接関係する法律は金融商品取引法ですが、初心者でも理解しておくべき違法行為として、相場操縦取引があります。文字通り、相場を意識的、人為的に変動させ、その相場の変動を利用して自己の利益を図ろうとするものです。具体的には、クロス取引と見せ玉(みせぎょく)は、知らないとトレーディングツールで注文ができなかったりするので理解しておきましょう。以下では、違法な行為と一見類似しているけれども違法ではない手法を合わせて解説します。

クロス取引と両建て

JPXでは「対売買(クロス取引)」と表現している。対当売買(クロス取引)とは、同一銘柄について、売り注文と買い注文を同時期に同価格で約定させることを意味し、金融商品取引法の相場操縦行為として禁止されています(違法行為)。売買を活発に見せかけたり、株価が上昇する(または下落する)と思わせたりする効果を持つため、証券各社のトレーディングツールでは、対当売買に該当するような注文を出そうとすると、ツールによって拒否されてしまいます(注文を受け付けられないという注意喚起メッセージが出る)。

これとよく似た手法に、両建てつなぎ売りがあります。売りと買いの両方に建玉をして損益をロック(固定)する効果があるため、株価の一時的な変動や値動きの方向感がつかめない時のリスク回避として用いられます。また、デイトレとはあまり関係ありませんが、株主優待の権利が確定する前後で株価が大きく変動するのに備えるためにも使われています。両建てやつなぎ売りは、同時期+同価格になれば対当売買と同じですが、時期がずれていたり、価格が違っていたりすれば問題ありません。

見せ玉(見せ板)と注文取消し

約定するつもりがない大量の注文を出して、他の参加者に相場の状況を誤解させて売買取引に誘い込み、自分の注文を取り消したり訂正したりすることを言います。意図的に他の参加者に誤解を生じさせるという点が相場操縦行為に該当し、法で禁じられています。ところが、これを明確に判定するのは困難で、禁じられているにもかかわらず実は頻繁に行われているとの見方もあります。判定困難な理由は、現実問題として注文の取消しはしばしば起こり得るため(たとえば間違って注文したとか、注文後に状況や予想が変わったとか)、意図的な操縦行為かどうかを証明しにくいからです。

Youtubeで配信をしているデイトレーダーなどが、「注文の取消しはまずい」と強調する場面を時折見かけますが、それは見せ板と認定されたら厳しい処分があると危惧しているからだと思います。

こうした事情があるため、見せ板に関してはグレーゾーンとなっていて、他の操縦行為に比べて摘発が難しい状況にあるかもしれません。「注文を取り消したら証券会社から電話がかかってきた」という話も聞きますが、実態はよくわかりません。

当然、注文の取り消しや訂正は、しないに越したことはありませんが、だからといって必要な取消しや訂正を我慢するのは馬鹿げていると言えるでしょう*8

 

まとめ

今回の記事では、デイトレを実際に行うときに、知らないとデイトレ中に困惑してしまい、判断や注文などの行為に影響しそうな取引ルールや用語について解説しました。とりわけ「ロット」や「ティック」は注文に直接かかわる言葉なので、その意味を正確に理解しておきたいところです。また、相場操縦行為である対当売買や見せ板は、該当する行為を行ったと認定されると法律違反となるため、類似行為との違いを明確にしました。両建てや注文の取り消しは、不公正取引の条件に該当しなければ通常の取引行為なので、必要な場面で安心して使って良いものです。

次回の記事では、デイトレの入門書等でおなじみのテクニカル分析とファンダメンタル分析について、その必要性や有効性を当キャンプ独自の立場から解説しようと思います。どうぞお楽しみに!

 

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*1:ややこしいですが、「枚数」とか「件数」と呼ぶ場合もあります

*2:単元未満株と言って1株から取引できる制度もありますが、あれは取引所ではなく、投資家と証券会社の間で行われている特殊なサービスです。

*3:信用取引では資金の約3倍まで株式を購入できるので、50万円の資金の人でも1千円の銘柄を15ロットまで買い付けられます。15ロットの場合、100円の下落で15万円の損失ですね

*4:TOPIX構成銘柄か、そうでないかで異なります

*5:このように値段の高い銘柄を「値嵩株(ねがさかぶ)」と言います

*6:現物取引の場合は返済ではなく売却といいます

*7:表示記号については自分が使うツールではどうなっているか、マニュアル等で確認してください

*8:取り消しはダメだが訂正なら良いという主張も見かけますが、法が規定しているのは「権利の移転を目的としない仮装の有価証券の売買」(第159条)なので、訂正なら良いという理屈は通りにくいと思います