デイトレ初心者ブートキャンプ!

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初心者が扱える情報量:板、チャート、出来高だけで戦おう

今回の記事では、当キャンプがデイトレにおいてしっかりと観察すべきと考えている3つの対象、板、チャート、出来高について解説していきます。

すでに証券口座を開いてトレーディングツールを操作したことがある方なら、そこに膨大な情報が含まれていることをご存じでしょう。

初めてツールを開いたとき、どこを見て良いのかわからず呆然としなかったですか?まだ口座を開く前でトレーディングツールの画面をよく知らないという方も、証券各社のツール紹介ページを見れば、「この画面の中の何が大事で、いつどこを見たらいいんだ?」と疑問に思う人もいるでしょう。

だから初めに明記しておきたいと思います。トレーディングツールは、人間に処理できるよりもはるかに多くの情報をトレーダーに提示することが可能です。デイトレ初心者がまず克服すべきは、流暢に知覚できないこの情報を、どうやって扱える量に抑えるか、抑えた上でトレードするかという課題です。

当キャンプではそれを、板、チャート、出来高の3つに絞ってトレードする戦略をお伝えしていきます。この記事を読むことで、なぜこの3つの情報なのか、それぞれの情報が互いにどのような働きをするのか、理解できるようになります。

人間が一度に処理できる情報量

そろばんのフラッシュ暗算を見たことはありますか?

コンピュータの画面に次々と高速で提示(フラッシュ)される数字の塊を一瞬で読み取り、その数を使って暗算を行うのです。

見たことがない人は、下の動画を見に行ってみてください。才能とトレーニングによって人間の認知能力はどこまでも向上するという見本を見ることができます。

youtu.be

しかし、デイトレを始めようという人のほとんどは、暗算の達人みたいな能力を持ち合わせてはいないでしょう。フラッシュされた数字を正確に読み取るだけでも、普通の人間には難しいはずです。普通の人間が処理できる情報量は、どれくらいなのでしょうか。

マジカルナンバー7±2

1956年、心理学者のミラーが、「The Magical Number Seven, Plus or Minus Two」という研究論文を発表しました。人間が短期的に記憶にとどめて処理できる情報量には限界があり、多く人の場合、それは7文字プラスマイナス2、つまり5~9文字程度だと実験的に明らかにしました*1

もちろん記憶や知覚現象は複雑で、7±2があらゆる場面に当てはまるわけではないのですが、ケータイ番号(12桁前後)や車のナンバープレート(8~13文字)を復唱するのはちょっと難しく感じるとか、聖徳太子の超人伝説が「10人」の話を同時に聞きとったという内容であることなど、情報の処理容量には上限があることを示唆する体験やエピソードはたくさん思いつくことでしょう。

デイトレをする人間にもそれは当てはまります。トレーディングツールには、先にも述べたようにたくさんの情報が同時に提示され、刻々と変化します。株価、板上の注文数、ローソク足、テクニカル指標、発注画面、歩み値、市況情報、登録銘柄一覧、日経平均やTOPIXなどの指数情報などなど、1つのツールの中にこれだけの情報が提供されているのです。

当キャンプでは、こうした過剰な情報がデイトレ初心者にとっては非常なストレスになり、落ち着いてトレードすることを阻害すると考えています。もちろん、フラッシュ暗算が長年の訓練のたまものであるように、デイトレーダーも経験を積むことで膨大な情報を効率よく処理できるようになりますが、初心者にとってはハードルが高すぎるように思います。

経験値の低いトレーダーが相場に適応していくためには、少し頑張れば処理できる程度の情報を相手にすることが重要ではないでしょうか。では、それはどういう情報でしょう?

 

3つの観察対象:板、チャート、出来高

初心者が観察すべき情報として、当キャンプが「ミニトレ」の道具に選んだのは、板、チャート、出来高です。板は「いま、この瞬間」の状況を知り、注文を行う場所(板発注)として、チャートは前日の銘柄選択と当日の株価位置確認の手がかりとして、出来高は前日の銘柄選択と当日の活況度の情報として、ミニトレの3大兵器となります。

この3つを選んだ理由とその機能について説明しましょう。

板は主戦場

板はデイトレの主戦場です。突然火柱が上がり、爆弾が降ってくる、デイトレーダーが最大量の注意を割り当てて、生き残りに集中すべき場所です。

前線となるのは「最良気配」と呼ばれる価格です。売り板の最安値、買い板の最高値で両軍がにらみ合います。

下図は松井証券のツールの板画面ですが、売り方の最良気配値は805円、買い方の最良気配は801円となっており、802円~804円は中立地帯です。それぞれの兵力を見てみましょう。売り方には805円~813円までに18万2300株の注文があり、その上にはOVERとして30万6600株の後方支援部隊がいます。合計48万8900株の兵力です。それに対して買い方には、801円~793円に16万8800株の注文があり、その下には72万200株の部隊が控えています。兵力は88万9000株です。現兵力では、買い方が売り方の1.8倍で優勢ですね。*2

兵力の配置にも注意を向けてみましょう。売り方は805円と810円に大きな兵力を配置しています。どうやら810円が重要拠点になっており、7万株近い兵士が集まっています。買い方は中盤に兵力を分散し、1つの板ではなく価格帯を厚くしています。799円~796円が防御の要になっているようです。

そして忘れてはならないのが、成行注文の突撃部隊です。この部隊は秘密工作専門であり、どこに潜んでいるかわかりません。1日の相場の転換点などで、突如として現れ、その潜在兵力は相手方に見えていません。

このように板は、1枚の図で静的に観察するだけでも多くの手がかりを提供してくれます。場中になるとこれが刻々と編成を変え、両軍入り乱れての戦闘となるわけです。

(松井証券の板画面:https://www.matsui.co.jp/tool/ns-highspeed/ )

ネットストック・ハイスピード | ツール(投資情報ツール) | 松井証券

チャートは偵察部隊

次はチャートを見ていきましょう。チャートにはいろいろなチャートがありますが、多くのデイトレーダーが使っているのはローソク足だと思います。時間を一定期間で区切って、その間の始値、高値、安値、終値を1本の棒と上下についた「ひげ」で表し、時系列で並べたものです。赤い棒は陽線といって、その期間の終値が始値より高かった(株価が上昇した)ことを意味します。青い棒は逆に、株価が下落したことを表します*3。「ひげ」は始値と終値をはみ出した価格の幅を示し、上に伸びた線を「上ひげ」、下に伸びた線を「下ひげ」と呼んでいます。ローソク足に重ねられた何本かの線は移動平均線です。また、ローソク足チャートの下に示された棒グラフは出来高です。

当キャンプがお伝えする「ミニトレ」では、チャートは銘柄選定と当日の値動きを俯瞰するために用います。チャートの時間の区切り方は複数あり、1分ごとにローソクを描くなら1分足、1日ごとに描くなら日足、さらに週足や月足、ツールによっては年足まであります。分足にも3分、5分、15分…と、トレーダーの戦略に応じて適宜期間を変更したり、複数種のチャートを同時に映して使います。

詳しくはのちの記事で書きますが、チャートは相手方の動きを探る偵察部隊です。板には時間が表現されませんが、チャートは時間の経過をもとに作られるので、相場を俯瞰するのに役立つわけです。

チャートにはいろんな線やインジケータを表示できるので、トレーダーによってはものすごく情報量の多いチャートを表示させているケースもあります。たとえば下のチャートには、ローソク足と一目均衡表が表示されていますが、これにボリンジャーバンドやRSIを重ねることもできます。当然チャート上にはたくさんの情報があふれることになり、初心者はそれぞれの指標を追いかけるだけで手いっぱいになってしまいます*4

一目均衡表 | マーケットスピードオンラインヘルプ

では、偵察部隊を編成する小隊を説明しましょう。ローソク足チャートと、移動平均線です。ミニトレでは、トレーディングツールに多く用意されている様々な指標を検討した結果、ローソク足と2本の移動平均線(中期線と長期線)があれば、戦闘地域の情報を収集し、自軍の作戦行動に役立つ情報を得ることができると考えています。

現代の軍隊では、偵察において重要なのはSALUTEだと言われています。これは、規模(Size)、行動(Activity)、位置(Location)、部隊(Unit)、時間(Time)、装備(Equipment)の頭文字をとったものですが、チャートを見るときにもこれは応用できるでしょう。この銘柄のトレード規模はどれくらいなのか(チャート上の出来高が該当します。詳細は次項に書きます)、株価の位置はどのあたりにあるのか、大口や機関などの大部隊が展開されているか(これも出来高です)、いつ頃どのような動きをしてきたのかを、チャートで観察します(装備はちょっと例外的で、該当するとしたらIR情報などでしょう)。

他のテクニカル指標は使わなくて大丈夫なのか、と不安に思う人もいるでしょう。初心者の頃は、とにかく情報を求めがちです。しかし、トレードにおいてノイズはできるだけ排除すべきだと当キャンプでは考えます。板とチャートを交互に見るために、場中にキョロキョロするよりも、板を見ることに集中すべきです。それに、いかなる指標も未来を計算から導くことはできません。すべてのテクニカル指標は過去の値動きの統計的要約だからです。膨大なデータを持っている気象庁ですら、降水の有無という大雑把な予想の精度は85%を下回ります。それならば、「いま、この瞬間」の動きを板上で観察することに集中したほうが、初心者のトレードにおいては有利だと思います。

ただし、銘柄選定においては過去の要約が重要な情報をもたらします。「3日連続で上昇幅を伸ばしてきている」「株価が過去25日の移動平均線をずっと超えられないでいる」「この1か月の間に何度も同じ価格で上昇を跳ね返されている」など、チャートにはその銘柄に関する事実(ファクト)が記されています。つまり、エビデンスに基づいて銘柄の状況を把握することができるので、解釈を入れずに検討することができます。

出来高はその銘柄の燃料

チャートの下に表示されている出来高は、燃料のインジケータとして観察することができます。言い換えれば、その銘柄がどれくらい活発に取引されたか示します。もし出来高が徐々に増えてきているなら、その銘柄は人気化し、多くの投資家の資金を取り込んできたと言えます。逆に出来高が減ってきていれば、相場参加者が徐々にその銘柄から離れていったことを示します。

参加者の少ない銘柄には、取引の機会があまり訪れません。せっかく株を仕入れても、売る相手がいなければあなたのトレードは完了できません。仮にいたとしても、不本意な価格で取引せざるを得ない状況になるかもしれません。その相手を待つ時間も非常に長くなるでしょう。それは資金効率が悪いと言えます。デイトレーダーは、よほどの上級者でない限り、取引が不活発で参加者の少ない銘柄でトレードしようとは思いません。また、極端に出来高が多い銘柄にも注意が必要です。低位株とも呼ばれますが、株価が100円に満たないような銘柄では、千株、1万株単位で売買が行われています。初心者が100株でトレードして利益を上げられるような場ではありません。低位株、出来高の少ない銘柄は、上級者向きだと覚えておくと良いでしょう。のちに詳しく書きますが、ミニトレでは1日の出来高が常時100万株以上あることを銘柄選定の基準として用います。銘柄選定における出来高の基準は、人によって30万株以上とか、10万株以上とか、いろいろな値を目にすると思いますが*5、どれが正解ということはないにせよ、出来高が少ない銘柄とは約定回数が少ない銘柄とほぼ同義ですから*6、閑散とした銘柄をわざわざ選ぶ必要はないというのが当キャンプの考えです。

銘柄選定と出来高の関係で少々悩ましいのは、確認できたほとんどのトレーディングツールや銘柄スクリーニングツールで、出来高を基準として銘柄をふるいにかけることができないということです。これほど明確で重要な項目が、なぜ銘柄スクリーニングに利用されていないのか不明ですが、当キャンプが把握している範囲では、「TRADER'S WEB」のホームページ内にある銘柄スクリーニングだけです。ほとんどのツールやスクリーニングサービスでは、売買代金(=株価×出来高)でスクリーニングされるようになっています。*7

www.traders.co.jp

 

まとめと次回記事の予告

今回の記事では、デイトレ初心者にとってトレーディングツールに表示される情報は過剰で、処理しきれないことを説明し、情報は絞り込んだものを用いるべきであることをお伝えしました。当キャンプでは、板、チャート、出来高という3つの情報に絞り、それぞれが果たす役割を解説しました。主戦場となる板、偵察部隊としてのチャート、燃料を示す出来高、この3つの情報はデイトレにおいて欠かせない情報です。そして、チャートには非常に多くの情報を表示可能ですが、そこでも情報をぐっと絞り、ローソク足と移動平均線2本だけを表示するという選択をしています。

この編成によって、デイトレーダーは主戦場である板に自分の神経を集中させることができます。今後の記事で一歩ずつ解説していくミニトレで、板を観察する視点を持ち、絞り込んだ情報で利益を目指しましょう。複雑で過剰な情報は、トレーダーの集中力を早く消耗させてしまうことを、ぜひ覚えておいてください。

次回の記事では、トレードの枠組みとなる「信用取引」について解説します。すでに別の記事で説明したように、信用取引をするためには証券各社が定める口座開設基準をクリアしなければなりません。そのことは、信用取引が通常の現物取引とは異なる性質をもつことを示唆しています。どのように性質が異なっているのか、何か特別な注意点はあるのか、そうした疑問に答え、デイトレーダーのほとんどが利用している信用取引について理解を深めておきましょう。

では、次回もお楽しみに!

 

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*1:この範囲は意味のない文字列を記憶させた場合です。

*2:ここでは単純に多いほうを優勢と書いていますが、実はそうとも限らないことを付記しておきます。

*3:ローソクの色の初期設定はツールによって異なります。またその設定を自分で変更することもできます。

*4:入門書などでは、トレンド系とオシレータ系のベストな組み合わせなどが紹介されていますが、ローソク足、移動平均線、出来高も当然表示されていますから、最低でも5つの情報を追いかけることになります。

*5:出来高は気にしないという人までいます

*6:1回の約定で大きな出来高になることもあるので「ほぼ同義」と言っています

*7:実際に使ってみるとわかりますが、売買代金で銘柄検索すると、出力される銘柄の出来高は非常にまちまちです